研究概要 |
本研究の第1の目的は,欧米の垂直・混合型企業結合に対する規制態度の特徴と相違点を明らかにすることであった。そのために,欧米の垂直・混合型企業結合に関する法律,ガイドライン,主要判例,競争当局の代表者のスピーチ等を材料とし,両者の規制態度の類似点と相違点を抽出した。 本研究の第2の目的は,垂直・混合型企業結合規制に関連する経済理論と実証研究の成果にっいて整理することであった。本研究では,近年の垂直・混合型企業結合に関する代表的な経済理論・実証研究を検討し,得られた知見について整理した。 第3の目的は,垂直・混合型企業結合に関する経済学的議論を法律学的議論に架橋することであった。すなわち,欧米における垂直・混合型企業結合の規制態度の類似点や差異について,経済学的な見地から妥当性を検討した。このような検討を踏まえ,欧米の規制態度や経済理論・実証研究の整理から得られた知見を基に,我が国における垂直・混合型企業結合に関する規制についての示唆とは何かを明らかにした。 上記研究の結果、次のような研究結果を得た。すなわち、垂直・混合型企業結合の審査に当たっては,以下の3段階に分けて検討することが適当である。 (1)当該企業結合の結果,結合企業が市場閉鎖を行い,競争者の費用が上昇する蓋然性が高まるか。 (2)競争者の費用が上昇する結果,結合企業の価格支配力が高まり商品価格の上昇が見込まれるか。 (3)企業結合による効率性の効果によって,価格上昇の悪影響が緩和されるか。 本研究では,垂直・混合型企業結合規制について,法学的見地から欧米の判例・ガイドライン等に示された規制の特徴や相違点を整理し,経済学的見地から関連する経済理論・実証研究の成果を基に分析を加え,法学・経済学の両面からの協働作業を行ったという点で,一定の意義を見出すことができた。
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