研究概要 |
本研究計画における19年度の目標は、経済的グローバル化を貿易の拡大および国際金融の活発化としてとらえ、これが政治体制の変動にいかなるインパクトを与えるのかについて、フォーマル・モデル・ビルディングを行うことであった。 この目的はD.Acemoglu and J.Robinson(2006)Economic Origins of Dictatorship and Democracy,Cambridge U.P.において展開されたフォーマル・モデルをベースとした「経済的グローバル化モデル」を作成し、演繹的にグローバル化が政治的自由を促進すること、そしてレントが民主化移行を阻害することを確認した。 その上で、モデルの含意が実証的根拠を持つことを明らかにするため、1960年から1999年までの世界170力国をカバーするパネル・データを分析した。分析結果はモデルの含意を統計的に支持したので、グローバル化が政治体制の変動を刺激すること、および中東では経済グローバル化が相対的に進んでいないこと、さらに経済レントの存在が体制変動を抑制していると主張することができる。 これまで本プロジェクトでは「レンティア国家」「体制の経路依存性」「市民文化」「所得分布の平等性」という説明変数から、中東諸国における政治的自由の閉塞性にアプローチしてきた。本年度は「経済的自由の進展」すなわち経済グローバル化に対する中東諸国政府の反応を直接分析したことで、三年間の研究計画は完成をみたといえる。
|