研究概要 |
本年は研究機関最後の年であるため,研究の総括および研究成果の発表を中心に行った。まず,前年度同,産業汚染が地域集積にいかなる影響をあたえるのかについて分析を行うため。既存のモデルにこれらの要素を入したモデルを構築し,分析を行った。その上で環境政策が経済システムにいかなる影響を与えるかについて明らかにした。 地域集積とそれによってもたらされる技術の転換との関係を分析した論文である"Population,Technological Conversion,and Optimal Environmental Policy"をThe Annals of Regional Scienceに発表した。本論文は産業汚染による外部不経済のみを課税によって内部化を行っていたが,集積の経済によってもたらされる外部経済の内部化については議論をしていなかった。この点を解決した研究として,「環境政策,産業政策,および不完全な集積効果」を執筆し,三田学会雑誌に掲載された。Copeland and Taylor型の環境汚染モデルをハリス・トダロモデルに導入し,家計の環境汚染のダメージを考慮したモデルを構築し,その排出税と削減補助という2つの環境政策を比較し,それぞれの環境政策は必ずしも社会厚生を悪化させないことを示した。この論文は,"Unemployment,Trans-boundary Pollution,and Environmental Policy in a Dualistic Economy"としてReview of Urban and Regional Development Studiesに発表した。 また,従来の核・周辺モデルは非線形の一般均衡体型で記述しされていたため,数値解析によるシミュレーションが主流であった。Ottaviano,Tabuchi,and Thisse(2002)は解析的に解ける核・周辺モデルの開発に成功し,筆者もこのモデルに環境を導入したモデルを構築し分析をおこない,環境を含まないOttaviano,Tabuchi,and Thisse(2002)とは異なる結果が生じることを示した.この研究成果はアメリカのSavannah(GA)で開催された国際地域学会の北米大会で報告された。
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