研究の目的は、自社単独では製品を開発できない競争環境において、モジュール技術を外部から結集する戦略とマネジメントを明らかにすることである。近年普及の進んでいる情報家電分野もモジュール化の特質があることがわかってきた。しかし、日本企業は優れた製品開発の実施にもかかわらず、収益性と競争力に問題があることが指摘されている。本研究はこうした課題を念頭におき、モジュラー型製品分野における戦略とマネジメントを明らかにする。 本年度は、中国企業(LENOVOおよびTONGFUNG)および日本企業(PANASONIC)への訪問調査を実施した。また昨年度に引き続き、製品データベースの作成、市場成果データ(1994年〜2006年の主要PC企業16社の出荷台数・売上高)の収集に取り組んだ。訪問調査およびデータ解析の結果、次の4点が明らかになった。 モジュール技術の結集において、第1に、モジュール技術の迅速なアップグレードを進める戦略がある。これはグローバルな調達体制を持つ米国企業が得意とし、直販において最新部品を選択できるDELLがその典型である。第2に、モジュール技術の標準的な組み合わせ方の上に、独自の組み合わせ方を合成する戦略である。これはPANASONICやSONYのように、システムとしては業界標準規格に沿っているが独白コンセプト(システムの堅牢性ユーザビリティなど)をシステムに合わせ込んだ製品の開発を行うものである。第3に、前述2戦略は異なる組織能力をベースにしており、2戦略を同時追求する企業のパフォーマンスが低いことである。これは比較的自社開発力をもつ日本企業が陥りがちな罠である。第4に、モジュール化の進む製品分野で競争する日本企業への示唆として、上記第2の戦略が有効だということである。日本企業の得意とするモノ造りの力が活かされ、高付加価値製品の開発につながるからである。
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