研究概要 |
「起業家ネットワークに関する経験的研究の現状と展望」(相原・秋庭,2005)において析出した論点にそって,鯖江地域,諏訪地域,東大阪地域,大川地域にて二次資料および聴取調査データを収集し,(1)起業家のエゴセントリックなネットワークに関する定性データの分析作業をおこなうとともに,(2)パスモデルを適用した定量データの解析をおこなった。定性データの分析に際しては主にグラウンデッド・セオリー・アプローチを,他方,定量データの解析に際しては共分散構造分析の手法をそれぞれ採用した。 分析の結果,(1)複数の地域に共通して,「地域の産官学との日常的な交流」から「ネットワークから受ける開発協力や支援の活用」を媒介に「ネットワークを通したアイデアの獲得」に至るプロセスが存在している,(2)地域によって,産業界との日常的な交流が製品開発でのネットワークの活用に与える影響は異なっている,(3)この地域間での影響関係の相違は,(1)産業界における日常的な交流の目的が地域によって大きく異なっている,(2)下請関係や仲間取引の普及度合いなどの面において,産業構造の特性が地域によって大きく異なっている,の2点に起因している,(4)地域によってネットワークの利用の成果が異なっている,(5)起業家活動におけるネットワークの役割は,起業家をとりまく社会構造や制度的文脈の影響を受ける,の大きく5つの興味深い発見事実が確認された。
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