研究概要 |
本年度は,昨年度までの研究成果を踏まえ,ジャーナル論文を中心に「知識集約的ビジネス」の概念について再度検討を加えた。並行して,当初予定していた量的調査ではなく,実態把握,文脈理解の深化を狙いとした質的調査を実施した。その結果,現在,「知識集約的ビジネス」の概念の対象領域が非常に幅広くなってきていることがわかった。これは,知識集約的ビジネスのプロトタイプとして議論されてきた「プロフェッショナル・サービス」に対する需要が顕在化してきていること,かつその形態が変異してきていることが反映されている。経営コンサルティング・サービスについて言及すると,助言から実質的な支援サービス(例:アウトソーシング)にまでその対象領域が拡がりをみせている。それに応じて,プロフェショナル・サービスというよりも,むしろ,モノ作りとして捉えられるものや,両者のハイブリッドな形態のビジネス・モデルが生まれてきていることがわかった。結論から言えば,現在は,「知識集約的ビジネス」の進化過程期,多様化過程期にあり,様々なビジネス・モデルが実験的に創造されているフェーズにあたると考えられるだろう。この「過程期」という前提に立った上で,成功する知識集約的ビジネスに共通するモデルとは,第一に,「プロフェッショナル・サービス」である。これは,サービス内容の変化はあったとしても,課金システムとしてはパーディアム方式を堅持しているビジネス・モデルである。第二に,「パッケージ化」である。これは,コンサルティング方法論の標準化を基本とした,サービスの開発・提供を行うビジネス・モデルである。近年増加してきている「ビジネス・サービス」のカテゴリーで一般化してきている。ハイブリッド・モデルは,理念型としては評価できるが,実際には性質の異なる複数のビジネス・モデルをマネジメントすることは非常に難しいことが発見事実として明らかとなった。
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