研究概要 |
欧米各国を中心に,過去十数年間の会計監査実務の変化は目覚しく,米国等を中心にビジネス・リスク・アプローチと呼ばれる新たな監査方法が登場するに至っている。そこで,本研究では,平成17年度において,ビジネス・リスク・アプローチの基礎となっている従来の「リスク・アプローチ」という監査方法に焦点を当て,その生成及び発展の過程を明らかにし,論文2編及び博士学位請求論文としてまとめた。 また,これらの研究成果を踏まえ,リスク・アプローチの現状を分析すべく,平成18年度においては,監査リスクの構成要素である固有リスク及び統制リスクについて検討した。これらは,ビジネス・リスク・アプローチあるいはわが国の監査基準で採用された「事業上のリスク等を重視したリスク・アプローチ」では,「虚偽表示リスク」として結合して評価されるリスクである。そこで,リスク・アプローチ監査に関する先行研究を踏まえ,この結合リスクである「虚偽表示リスク」概念が導入された背景を示し,さらに,虚偽表示リスクの評価における固有リスク評価の問題点を検討した論文を公表した。 今後は,これらをさらに発展させ,ビジネス・リスク・アプローチには,どのような特徴があるのか,特に,ビジネス・リスクの把握方法(ツール)とそれを監査手続に反映させる方法に焦点を当てて調査し,また,上記のわが国の監査基準に取り入れられた監査方法が,いわゆるビジネス・リスク・アプローチと等しいものなのか等について調査していく予定である。
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