研究概要 |
最終年度は暖簾の会計に関する研究を進める上で,Carnegie and Napier(1996)際比較会計史(Comparative International Accounting History)の立場から,アメリカの暖簾の実質的な意味内容と比較するために,イギリスの会計文献,特に判例と専門職雑誌にみられる暖簾の意味する事項について検討を行い,これを『産業経理』誌上において公表した。そこでは,特に19世紀のイギリスにおいては,小規模企業を前提とした暖簾の議論が主であり,特に法廷において暖簾が問題となるのは,暖簾と競争制限的行為との関係であった。企業の買収に際して暖簾が購入されるとき,当該暖簾の譲渡はその当事者,特に売り手がどの範囲まで競争的行為が制限されるかが問題であった。19世紀末になると,暖簾の売り手に課せられた競争的行為の制限が転じ,買い手の資産へと変化するが,これはアメリカ的なビッグ・ビジネスを前提とした超過収益力の表象たる暖簾とは似て異なるものであり,異なる背景が異なる概念をもたらしていることを説明した。現在,研究期間を終了した後であるが,概念の違いが会計処理の歴史的相違にいかなる相違をもたらしているか,そしてその相違は現在の会計に対していかなる影響をもたらしているかを研究している中途であり,これらをまとめて公表する予定である。
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