研究概要 |
本研究は,アライアンスを成功させるために組織間管理会計が果たす役割を解明し,組織間管理会計実務の背後にある論理を析出することを目的としている。具体的には,アライアンスの中でも製造合弁事業における組織間コントロール構造の体系を研究の対象とした。本年度は,研究最終年度として,郵送質問票調査を実施し,合弁事業の事後的なコントロールメカニズムを念頭にデータ分析を行った。分析によれば,まず組織間コントロールメカニズムには,管理会計システムにもとづく出資会社による合弁会社へのモニタリング,指示・指導、提案といった直接関与などがあり,これらの程度によりコントロールパターンが規定されている。また,コントロール特性には,目標のタイトネス,権限委譲,包括的・詳細な契約,コンフリクトヘの対処などもあり,メカニズムと相互に関係している。加えて,取引特性(資産特殊性,業務の測定可能性など)や関係性特性(信頼,情報共有,交渉力,企業文化の類似性など)にも,コントロールメカニズムとの間に関連がみうけられた。加えて,質問票に回答を得た企業に対する複数回のインタビューにより,管理会計担当者の果たす役割についてフィールドスタディを継続的に実施した。合弁会社の管理会計担当者は,当該会社への複数の出資会社に対して経営状況を報告できるように,各出資会社の要求に照らした形で会計情報を収集し,伝達を行う重要な役割を果たしている。加えて,合弁会社のトップマネジメントは管理会計情報にもとづき各出資会社と事業遂行状況の意見交換を行っており,事業運営上,組織間管理会計情報が重要な役割を果たしている。 本研究は,組織間コントロールメカニズムに焦点をあててきたが,今後はインプットプロセスのコントロールも含め,組織単位間の相互依存性管理に焦点をあて,さらに組織間管理会計の理論を精緻化する必要がある。
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