「認知資源があるときにサブタイプ化が生じる」という仮説を検証するために、昨年度に実験を実施した。実験は実験参加者の認知資源を操作した上で、ステレオタイプに一致した事例とステレオタイプに一致しない事例を提示し、その後にいくつかの従属変数に回答してもらうというものであった(事例は複数の行動記述文からなるものであった)。その結果、認知資源がない条件よりもある条件で、集団に対する認知がステレオタイプ的になるということを明らかにした。つまり認知資源があるときにサブタイプ化が生じるという仮説を支持する結果を得た。本年度は、昨年度は行うことができなかったデータ分析(提示した事例の記憶に関する分析))を行った。具体的には認知資源がない条件とある条件で、提示した事例の記憶が異なるかどうかを検討した。その結果、ステレオタイプに一致する情報の記憶成績は、認知資源の有無によって差は見られなかった。ただしステレオタイプに一致しない情報の記憶成績は、認知資源の有無によって差が見られた。認知資源がある条件の方がない条件よりも、記憶成績がよかった。この結果は、認知資源がある条件では、ステレオタイプに一致しない情報を十分に処理してサブタイプ化をしたために生じた結果であると考察された。ただしデータが少なかったために、本年度の後半に実験データの追加を行った。その結果の分析については今後検討を続ける予定である。なお昨年度の分析と本年度の分析をした結果は、日本社会心理学会大会第46回大会にてポスター発表された。
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