研究概要 |
本年度は、2007年3月に大手オンラインパネルを用いた、メディア利用と社会関係資本に関する調査(有効回収数1,052、回収率47.7%)の分析検討を中心に行った。本調査にはWilliams(2006)による「インターネット社会関係資本尺度」(ISCS)のオンライン項目(橋渡し型・結束型下位尺度)日本語版を組み込む試みを行っているが、その因子構造の検討の結果、オリジナルで得られている橋渡しおよび結束の2次元に加えて、結束の反転項目が主に集まる「疎外次元」がさらに析出された。これらの尺度に加え、社会関係資本に関わる変数としての組織参加、社会的ネットワーク関連変数(携帯登録人数、年賀状枚数、SNS対人関係人数、position generator等)や一般的信頼、また社会関係資本に影響を与える変数としてのマスメディア利用(テレビ利用パターンおよびニュースメディア接触)とインターネット利用形態、また特にマスメディア影響の媒介メカニズムの検討のための培養効果項目、また社会関係資本の結果変数としてのpsychological well-beingなどの変数の尺度構成を行い、スタンダードな線形モデルによる規定関係の検討を行ったのと同時に、ニューラルネットワークと決定木分析を組み合わせた探索的な非線形モデルの解析を行い、その精度に関する比較検討を行った。メディア環境の変化と共に社会関係資本がどのように維持されるのかは、社会的にも関心が高いテーマであると同時に、本研究で行った統計解析技法は、社会科学分析における非線形性の検討に意義があると考えられる。平行して本年度に実施した理論的考察もふまえながら、今後は本研究の成果(解析面及び技法面)の公表、またそのための再分析をさらに進める。
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