研究概要 |
親役割従事者を対象とした大規模調査研究では,平成14,15年度に第1子を出産した夫婦約1000組を対象として,妊娠期,出産後6ケ月,1年,2年,3年,4年,5年時点の調査を実施した。結果として,第1に,夫婦関係は親となる意識に影響を及ぼすことがわかった。妊娠期の夫婦関係を(1)愛情-夫婦相互サポート多い群,(2)夫婦相互サポートと葛藤多い群,(3)愛情少なく葛藤多い群の3タイプに分類した時,(3)(2)(1)の順に親となる意識のうち視野の広がりや柔軟性が増加し,子育てに対する制約・負担感が減少した。第2に,仕事役割の状況,仕事と家庭の多重役割は,親となる意識に影響を及ぼすことがわかった。妊娠期,出産後6ヶ月,1年,2年時点の夫/妻の仕事での過重労働,人間関係の問題が多く,能力発揮,職場の家庭に対する理解が少ない時,妻/夫の親となる意識は視野の広がりや柔軟性が少なく,子育てに対する制約・負担感が多くなった。 親役割非従事者を対象とした調査では,生殖医療専門クリニック,総合病院生殖医療専門外来を通じてポスター,チラシで調査協力を呼びかけ,協力者はWEBで登録してもらった。郵送法により調査票の配布回収をおこなった。協力者数が少なかったので,当事者団体,生殖医療専門クリニックなどを新たに募り,調査を継続している。本研究は平成20年度〜22年度基盤研究C(代表者小泉智恵)に引き継がれた。 親役割非従事者を対象とした面接調査では,大学病院不妊外来を受診した女性のうち調査協力の得られた21人に半構造化面接を実施し,夫婦関係,人生の転機,生涯発達についての語りを得た。その結果,夫が妻の心身を気遣い,治療での心労をねぎらった時に,妻の夫に対する愛情が深まり,それを転機として,治療と距離を置き,夫婦二人で過ごす人生を歩み始めていた。 以上の研究を通して,親役割従事者,親役割非従事者双方において,夫婦関係の良好さが次のライフステージ(親役割従事者は親役割移行,親役割非従事者は夫婦二人での人生への移行)を導くことが示唆された。
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