研究概要 |
本研究の目的は,うつ病に対する集団認知行動療法プログラムの効果を検討することである.平成18年度は,昨年度に引き続き,うっ病患者を対象に集団認知行動療法プログラムを実施し,その短期的効果を検討するとともに,コントロール群データを収集し,集団認知行動療法群との比較検討を行った. 対象者は,うつ病患者18名(男性16名,女性2名.平均年齢43.6±8.5歳)であった.1名を除き,17名は薬物療法を併用した.集団認知行動療法プログラムは12セッション(約3ヶ月間)からなり,各セッションのねらいは心理教育,自己理解,思考の再検討,生活場面での実践,再発予防であった.1グループは患者4-6名で構成され,スタッフ3名でプログラムを実施した.さらにプログラム前後に,抑うつ症状(BDI, HAM-D),社会的機能(SF-36),非機能的認知(ATQ-R, DAS)を測定した.一方,コントロール群は薬物治療中のうつ病患者6名(男性2名,女性4名.平均年齢44.5±9.1歳)であった.コントロール群には,質問紙調査(BDI, SF-36,ATQ-R, DAS)を約3ヶ月の間隔をおいて2回実施した. まず集団認知行動療法群18名の抑うつ症状および心理・社会的機能について,時期を要因とした分散分析を行った.その結果,BDI, HAM-D, SF-36「身体機能」「活力」「社会生活機能」,ATQ-R「肯定的思考」について改善が認められた.次に,集団認知行動療法群とコントロール群の各指標の変化量について,群を要因とした分散分析を行った結果,いずれの指標も群の差は認められなかった. 以上のことから,うっ病の集団認知行動療法プログラムと薬物療法の併用は,抑うつ症状や心理・社会的機能の改善に有効であることが確認されたが,その効果は薬物療法単独に比べて優れているとまではいえなかった.今後はさらにサンプル数を増やして検討する必要がある.
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