研究概要 |
本年度の研究実績として以下のことを挙げる.まず第1に学習材料を呈示するための実験プログラムを引き続き改良し,眼球間間隔の個人差に対応する部分を改善した.また呈示のためのレンズ等の光学機器部分を木製から金属製のものに作り替えた.ただし実験装置を個人差(眼球間感覚など)に対応させた調整に時間がかかり,実験者の装置セッティングに対する慣れの問題も生じた.記憶課題成績だけの測度ではなく,生理的指標を取ることを目的に瞳孔サイズ計測を行うシステムを安価に行う開発を行った.その開発過程における留意点等を論文にした.ただしその測度を利用して学習モダリティの多様性が記憶に与える影響を測定するところまでは行えなかった. 第2に学習モダリティを多様化した場合の記憶課題成績を測定する試みとして,立体視を行う条件を設けて,空間的な記憶成績を測定した.残念ながらクリアと言える結果が出たとは言い難い状態である.その理由として立体視ができるかどうかという意欲や立体視の経験といった個人差が記憶成績に影響していることが内省報告から分かった.課題試行の教示(立体に見えるかどうか判断してその程度評価してください)や学習材料を呈示する呈示装置自体の特性(レンズを覗く,装置自体が大仰な印象を与える)といったことが,剰余変数となり,独立変数の操作(立体視)をうまく行かせてなかったと考えられる.しかし,この1年間で本研究が対象とするフィールドにおいて,実験を適切に行うための外的要因については経験的に明確になった. 全体的に省みると,実験,測定のためのセッティングや準備に時間がかかりすぎ,計画通りの研究の進展とならなかった.しかしながら,今後この知見や経験や生かし,検討を進めていきたい.
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