研究概要 |
本年度は,まず求められる学力をカリキュラムとして具現化するための理論枠組みの設計に取り組んだ。枠組みは,「教科内容の理解と定着を目指す」次元と,「教科及び教科横断的な内容における活動を通して数学教育に求められる学力の育成を目指す」次元とからなる。本研究が対象とする図形学習においては,前者において図形の概念形成,後者において図形の探究の方法としての作図,証明活動が位置づけられる。 この枠組みをもとに,研究協力校の数学教師とともに,実践レベルでの学習内容の配列及び実践計画を立案した。対象は中学校第2学年「四角形」における四角形の包摂関係に焦点を当て,数学的対象に対する学習者の認識と論理的な思考力とのかかわりをべ一スにした授業計画を立てた。活動については四角形の包摂関係では動的幾何環境における作図に焦点を当てた。これを協力校で実践,その結果を分析することによって実証的に検討を加えた。 活動の分析より,四角形の包摂関係について,生徒は四角形の間の関係を体系的に捉え作図のプロセスに利用するよりも,個々の知識に基づく作図プロセスの組み立てが見られた。四角形の包摂関係を捉え,それぞれの四角形を体系的に整理できている状況は,ひし形などの作図で注目した観点で平行四辺形やその他の四角形を考察・作図することによって実現されると考えられる。このことから学習者にとって「教科内容の理解を定着」の対象は認識されているが,それらを発展させ,次の学習へと活かすことのできる方法としての「活動」についての認識は低く,定着した知識は,個々別々のものとして捉えられていることがうかがわれた。しかし「活動」に焦点を当てることによって,子どもたちは定着した知識を関係付け,体系化する傾向にある。またそれによってあらたな発見を進めていくことが明らかとなった。
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