研究概要 |
戦後教育改革期の数学教育における米国進歩主義教育の影響を明らかにするとともに,日本独自の改作について明らかにした。 1.占領軍の日本統治記録であるGHQ/SCAP文書を収集・分析した。 GHQ/SCAP文書の収集にあたっては,国立国会図書館の憲政資料室を利用した。また,収集した資料は,画像をデジタル化して保存するとともに,原文のままテキストデータ化,日本語訳して分析を行っている。 2.占領軍を通した米国進歩主義教育の数学教育に対する影響として,当時の学習指導要領(試案)の編集,改訂作業を取り上げた。そして,これに関連して行われた教科書検定制度の導入や指導内容の引き下げの経緯を明らかにした。ここでは,日本側の意図した教育政策の具体化が困難な状況であったことを明らかにした。 3.米国進歩主義教育の受容ではない日本独自の改作として,算数・数学教育の目標概念に「よさ」の感得という現在の指導の中心にあることが導入されたことを明らかにした。 4.進歩主義教育の影響として「生活経験」に基づいた算数・数学教育が主張されたことに対して,日本側は「生活」や「経験トを子どもが自ら算数や数学を創造している活動と位置付け,新しい算数・数学教育の指導法として位置付けていたことを明らかにした。 5.占領軍による影響は,評価に関しても見られる面と,日本側が目指した算数・数学教育が表れている面の両面を明らかにしていた。とくに,現在の算数・数学教育に継承されていく「数学的考え方」や「洞察力」の基になるアイディアとして,「見ぬく力」が主張されていたことを明らかにした。
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