研究概要 |
平成19年度は,類似性に基づいた推論の理論的究明,類推を活用した教材研究および小学校における授業観察を行った。 理論的究明として,「間テクスト性」概念に関する文献からKathy.G Short(1992)を手がかりとして,類推を生かす実践について検討した。小集団討議による読書実践を行ったshortの研究が示唆することは,類推が,一人でよりよく読むための解釈方略(読み方)としてだけでなく,共有と対話を促し共同的に意味を探究する学習方略(学び方)としても重要な役割を果たし得るという点である。この成果を第112回全国大学国語教育学会(2007年5月26日,於宇都宮大学)にて発表した。 類推を生かした授業を行うために,「きつねの窓」(あまんきみこ)を対象とした教材研究をおこなった。授業の課題として,虚構の世界に入り込まないで自分の素直な日常感覚をぶつけているような読みが特徴的だという点が明らかになった。この成果を『文学の授業づくりハンドブック-授業実践史をふまえて-』第1巻(浜本純逸他編,2008年)にて発表した。 授業観察による究明として,平成19年11月29日30日に福重浩之教諭(沖縄市立高原小学校)の類推を活用した2年生の授業を対象に授業観察を行った。「きつねのおきゃくさま」を読む子どもが,メディアを通じてきつねのイメージを作っており,本文の叙述に関わらず,最初からやさしいきつねと理解する問題意識に立脚して,きつねのずる賢さに注目する授業を構想し,実践した。この成果は,『国語科教育』への投稿論文として,現在執筆中である。
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