研究概要 |
聾学校卒業後の就労実態に基づく聾重複障害者の個別移行支援計画の作成に関する検討として,本年度は,主として以下の5点について実施した。 1点目として,聾学校高等部に在籍する知的障害を伴う生徒を対象に,進路指導主事の教員および保護者へのインタビュー,本人とのコミュニケーション,授業観察を行い,その上で,当該生徒を対象に作成された個別の指導計画および個別の教育支援計画についての検討を行った。 2点目として,聾学校高等部卒業生で,社会福祉法人が経営する大学内の食堂で現場実習を行うようになった方を対象に,実際の作業の観察,現場責任者および保護者との面談を実施した。 3点目として,群馬,埼玉,栃木,福島,宮城を対象に,聾重複障害児者の親の会や施設を対象に訪問調査した。 4点目として,上記の事例検討や調査結果については,障害者の就労支援に関する関係者間で月一回開催されるミーティングの場で報告し,意見交換を行った。 5点目として,各都道府県の聾重複児者の関連団体や施設に関するデータベースを作成した。 これらの結果,明らかになったこととして,1)聾学校に在籍する重複障害児の場合,進路指導主事が知的障害等の専門性を有しているかどうか,そして知的障害者施設等の卒業後の関係機関と良好な関係が構築されているかどうかに大きな課題があること,2)一方で,特に県内に聾重複者のための施設がない場合,既存の知的障害者施設等の中で,コミュニケーションに困難があっても引き受けてくれる施設を探さざるを得なくなり,作業はできても精神的に孤立してしまうこと,3)それを防ぐためにも,コミュニケーション手段などについて明記された個別の教育支援計画等の移行支援に関する資料を,教員だけでなく,保護者を含めた関係者が共有しておくことが不可欠であることが示唆された。
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