研究概要 |
眼科で多く実施されている視野の評価法が,被験者がターゲットを発見できたかどうかを言語やキー押しで反応する自覚的評価法であるため,インストラクションを理解し,その指示に従うことが困難,すなわち言語的なコミュニケーションが困難な乳幼児や知的障害等のある障害児・者の視野は検査できていないことが多いという問題点がある.そこで,視野内へのターゲット提示によって,ほぼ自動的に生じると言われている,眼球運動の一種であるサッカードを利用し,乳幼児や障害児・者の学習支援に資するための,特別な能力がなくても評価可能な他覚的視野評価システムを開発することを本研究の目的とした. 昨年度は,眼球運動,特にサッカードを指標とした視野評価を行うため,市販の装置を利用し,アプリケーションを自作することで他覚的視野評価システムを構築した.この他覚的視野評価システムを視野移動の生起のしやすさに違いがあることが分かった. そこで,本年度は,サッカードの生じにくい被験者に焦点を当て,「ターゲットへの視野移動」という厳密なインデックスに加えて,眼球運動のデータに基づいてターゲットを発見を判定できる数量化したインデックスを4種類考案し,その妥当性について検討した.また,視野検査が持つ単調さ,大きなストレスを軽減するために,ターゲットへの視野移動に伴ってフィードバックを与えるというシューティング・ゲームの要素を取り入れ,その効果を検討した.その結果,フィードバックにはストレス軽減の効果に加えて,眼球運動の生起頻度を高める可能性があることが分かった.検討したインデックスは,それぞれに特徴があり,視野測定において,「厳密さ」,「簡便さ」等どのような側面を重要視するかによって,適切なインデックスが決まることが明らかとなった.
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