本研究は、アメリカ合衆国におけるインクルージョン教育の指導的側面に着目し、それら実践の現状と課題について明らかにすることを目的としている。そのため、先行研究の整理を通してインクルージョンをめぐる動向(理論的背景)を検討したうえで、インクルージョン教育の指導に関する学校視察および実態調査を実施してきた。本年度(平成18年度)には、初年度における保護者に対するニーズの聞き取り調査に引き続き、学校におけるインクルージョン教育の状況と指導の様子をより詳しく把握するために、学校視察並びに教職員に対する実態調査を実施した。具体的には、一つの学校区に焦点化して初等学校及び中等学校を訪問し、校長や特殊教育担当者を中心に特殊教育全般に関する情報を収集し、さらに通常学級におけるインクルージョン教育の実践場面を観察した。さらに、学校における通常教育教員、特殊教育教員、学校管理職、特殊教育関連サービス職員に対してインクルージョンへの態度、実践ストラテジーの活用状況に関する質問紙調査を実施した。今後、職種や学校レベル等の変数に着目しながら、示唆を整理していく必要がある。また、州教育省における行政担当官とのミーティングを実施し、インクルージョンに関する行政的な枠組みと取り組みについて情報を得た。とりわけ、学校生活において様々な困難に直面している子どもの発見から具体的な支援の提供に至る手続き的な流れ、特殊教育の対象者に対して立案される個別教育計画(IEP)の内容の視点から情報を収集を進めた。
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