研究概要 |
本年度はこれまで行ってきた標数2および3の体上における3次元Calabi-Yau多様体の研究をさらに進め、その構造を完全に解明することを目指した。我々の構成したCalabi-Yau多様体は,標数0への非リフト性や一般ファイバーが特異であるようなファイブレーションが存在することなど,正標数特有の病的な性質を有することが前年度までの研究ですでに明らかになっている。ただし基礎体の標数が2であるとき,2つの準楕円曲面のファイバー積上に生じる複雑な特異点の計算が残されていた。本年度はこれを準楕円曲面のタイプごとに徹底的に調べ,それぞれの場合について特異点の状況を完全に確定させた。この結果,この3年間の研究の中心テーマであったCalabi-Yati多様体の構造が明らかになったので,廣門正行氏・伊藤浩行氏との共著論文として2編にまとめ発表した。 一方,上に記した特異点の計算を行う中で,有理二重点の変形空間におけるeauisingularな空間が次元を持っていることも明らかになった。これは標数0の体上では起こり得ないことが証明されており,正標数特有の現象であるといえる。低標数においては有理二重点はもはやディンキン図形から方程式が一意に決定されず,いくつかのタイプに分裂することが知られているが,我々は各タイプに対して局所的な計算を行い,変形空間におけるeiuisingularな空間の次元とその空間を与える式を決定することに成功した。これについては,現在論文を準備中である. なお研究にあたっては,国内外の研究者との議論および情報収集を行うことを目的として,研究集会やセミナーに積極的に参加した。2007年9月には慶應義塾大学で行われた研究集会で研究成果を発表した他,群馬県の玉原で行われたセミナーや城崎シンポジウム,さらに高知大学で行われた研究集会にも参加し,研究者と活発な議論を行った.
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