本年度は、既に知られているフルビッツ-レルヒ型二重ゼータ関数に対する関数等式の別証明を与えた。本研究計画における目標のひとつは各変数を虚軸方向へ変化させたときの多重ゼータ関数の挙動評価である。その過程で関数論の凸性原理が有効に機能するような関数等式の証明も視野に入れている。現在知られている多重ゼータ関数の関数等式は二重ゼータの場合のみで、三重以上については未知である。二重の場合は、より一般的なフルビッツ-レルヒ型の二重ゼータ関数に対する関数等式という形で証明がなされている。証明方法は、二重級数表示された関数を二重積分で表示した後で、ガンマ関数を含む関数を取り出す。そして、残った二重積分の積分路の一部を移動させ、その際に生じる極からの留数を数えるという手法である。筆者はこれと異なる方法で証明を行った。アイディアは、アトキンソンがアトキンソン公式を証明する際に行った二重級数の変形の類似をたどるものである。その際にポアソンの和公式を適用したいのだが、適用したい級数がやや複雑なため通常のポアソン和公式はうまく馴染まない。そこでポアソンの和公式自体を少し変形したものを構成して、扱う二重級数に応用した。そして得られた表示式に、ある変換公式を適用することで、フルビッツ-レルヒ型二重ゼータ関数の関数等式を証明できた。 ただし、この関数等式はいくつかの関数の和の形で記述され、そのなかに挙動を評価しにくい関数が含まれてしまうのが難点である。その関数の挙動評価を引き続き行う予定である。
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