活動銀河では、降着物質の量に匹敵する量のプラズマのoutflowが起こっていることが近年の紫外や可視域の吸収線の観測から示されてきており、outflowは活動銀河の物質流の収支を考える上で重要な構成要素と考えられてきている。その根元の領域は活動銀河の中心核のより近傍にあり、より電離が進んでいると考えられるため、outflowの根元を探るにはX線観測によるプラズマ診断が必要である。 すざく衛星のXIS検出器による観測で、活動銀河MCG-6-30-15のスペクトルにおいて、水素様およびヘリウム様に電離した鉄による吸収線構造を確認した。そのイオンの存在比から、このプラズマは極めて高い電離状態にあるのが明らかである。また、そのエネルギーから吸収体が秒速数千kmでoutflowしていると考えられることを確認した。 一方で、昨年度に続き、可視光の輝線速度幅が狭く、かつ、光度が高い活動銀河に着目してoutflowの研究を進めた。このような天体群の中で可視光の光度に比べて極端にX線光度が小さいという基準で選出したFBQS JO758+3923の観測をXMM-Newton衛星を用いて2006年4月と10月に行った。そのX線スペクトルで高階電離した酸素による吸収構造を発見した。そして、半年隔てた2回の観測の間のスペクトル形の違いから、半年の問に吸収体の量が変化していることが分かり、吸収体のgeometryを推定する手がかりとなった。また、吸収の影響を補正すると、可視光とX線の強度比が一般の活動銀河と同程度となることも分かった。
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