研究概要 |
A=4Nの質量数をもつ軽い原子核では、N個のα粒子からなるクラスター状態がα崩壊の閾値近傍に現れることが知られている。例えば、^<12>Cでは3個のα粒子からなる3αクラスター状態の存在が知られている。近年、αクラスター模型はA=4N以外の原子核にも拡張されつつあり、^<12>Cに中性子をひとつ追加した^<13>Cには、クラスター状態をなす3個のα粒子が中性子を介して共有結合している状態が存在すると予測されている。一方、^<12>Cから陽子をひとつ取り除いた核である^<11>Bでは、3個のα粒子が空孔を共有している状態が存在する可能性がある。これらの背景を踏まえ、本研究では3α配位,3α+n配位および3α+p^<-1>配位をもつ^<12>C,^<13>Cおよび^<11>Bのクラスター状態をアルファ非弾性散乱の手法で研究し、原子核における共有結合モデルを検証することを目的とする。 平成17年度に^<12>C,^<13>C,^<11>Bを標的とするアルファ非弾性散乱実験の実施したのに引き続き、平成18年度には、これらのデータ解析を行った。畳み込みポテンシャルを用いた歪曲波ボルン近似計算に基づいて多重極展開を実施し、3つの標的核における単極子遷移強度分布を決定した。さらに、決定した遷移強度分布を反対称化分子動力学計算と比較し、^<11>B,^<13>Cにおいて、3α+p^<-1>ないし3α+n配位をもっクラスター共有結合状態の候補を発見した。この結果を、ドイツ・ミュンヘンで開かれた国際クラスターワークショップの席上において報告するとともに、Physical Review C誌、および、Modern Physics Letters A誌、Journal of Physics誌上において公表した。
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