研究課題
若手研究(B)
本研究は、ウラン238(^<238>U)とケイ素30(^<30>Si)の融合反応により、超重元素の新同位体シーボーギウム264(^<264>Sg)を合成し、この原子核の崩壊特性、特に自発核分裂特性を測定することを目的とする。^<238>Uはラグビーボール型に変形している。このため、^<30>Siと^<238>Uの先端部衝突では、1次元モデルに比べてクーロン障壁が低くなり、サブバリヤエネルギでも反応がおこる。このエネルギー領域で原子核どうしを融合させることで複合核の励起エネルギーをおさえ、4nチャンネルとして^<264>Sgを合成するところに特徴がある。昨年度は、原子力機構タンデム加速器施設において、^<30>Siと^<238>Uがクーロン障壁を透過する断面積(核分裂断面積)を測定し、^<238>Uの先端部と赤道面への衝突に相当するクーロン障壁の高さを明らかにした。本年度は、融合反応で^<264>Sgの合成を行った。実験は、ドイツ重イオン研究所(GSI)の線形加速器施設から供給される^<30>Siビームを用いて行った。生成された超重元素を飛行分析型の分離装置でビームから分離して、崩壊イベントを測定した。まず、赤道面衝突に相当する反応エネルギーで5nチャンネルの^<263>Sg(既知核)を合成し、α崩壊を測定した。ここから反応エネルギーを11MeV下げ、3イベントの自発核分裂核種を同定した。複合核の励起エネルギーが11MeV低いことから、4nチャンネルの蒸発残留核、すなわち新同位体^<264>Sg(中性子数158)であると決定した。半減期は120msであった。この値は、Sgの他の軽い同位体(^<258>Sg,^<260>Sg,^<262>Sg)に比べて長いことから、中性子数162で閉殻構造になるという理論予測と一致した。1イベントについては、2つの核分裂片の運動エネルギーを同時計測し、全運動エネルギーとして197MeVを得た。これは、プルトニウム同位体の自発核分裂に比べて約20MeV高いエネルギーであり、原子番号が106と大きいため多くのエネルギーが解放されることを示す。
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Tours Symposium on Nuclear Physics VI, Torus, France, 5-8, September 2006. AIP Conference Proceedings 891
ページ: 71-79
The European Physics Journal A 29
ページ: 281-287