本年度は、電気光学結晶を用いた偏向器を実現するためのプロトタイプ作成を行った。電気光学結晶としてニオブ酸リチウムを用いた。 第一段階として、楔型偏向器の動作原理を確かめるために、電気光学結晶に楔型の電極を用いて直流高電圧2〜4kV掛けて、連続レーザ光が偏向することを確かめた。 次に、連続レーザ光ならびに高周波電源を用いたプロトタイプ製作に取り組んだ。ここでは、効率よく電力を結晶に伝えるために、電源との間にインピーダンスマッチングを取る必要がある。エネルギーが効率よく転送されているかどうかを確かめるために、SPICE等を使ったシミュレーションを行った。シミュレーションでは簡略化のために、光学結晶と電極をあわせて一つのコンデンサーに置き換えた等価回路を考慮した。コンデンサーとしての容量を容量計で測定したところ、約6pF(+-1pF)という結果が得られ、結晶の誘電率と電極の形から計算される電気容量6.6pFと一致した。また、理想的なインピーダンスマッチング回路を含めた等価回路を考慮すると、偏向器として十分な電圧(1.4kV)が置き換えられたコンデンサーに掛かることが予想される。実際の製作には、インダクタを用いたインピーダンスマッチングを作成した。インピーダンスの周波数依存性から回路全体のQファクターを求めたところ、シミュレーションにおける100より小さい値40が得られた。また、周波数430MHz出力40Wの高周波電源を用いたところ、電力反射が約60%と非常に大きくなってしまい、連続レーザ光の偏向は確かめられなかった。原因としてインピーダンスマッチング回路の周波数依存性が考えられる。現在、マイクロストリップラインや同軸ケーブルを用いたインピーダンスマッチング回路の製作に取り組むと同時に、より出力の高い高周波電源を製作依頼中である。
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