本研究では、パルス超強磁場下でピコ秒オーダーのポンププローブ分光法を確立することにある。パルス超強磁場の発生時間がマイクロ秒オーダーであり、通常用いている手法がそのまま適用できない。そこで、低繰り返し周波数の短パルスレーザーのパルス幅測定法であるパルス幅シングルショットオートコリレータの技術を応用し、時間軸情報を空間軸情報に転写することで、短い測定時間でのポンププローブ分光を行うことができることを目指している。 本年度は、昨年の補助金によって購入した冷却CCDカメラ、回折格子、ミラー、ビームスプリッタなど光学系を用いてチタン・サファイアレーザーの基本波(800nm近傍)のプローブパルス列の時間変化を観測するという実験を試みた。 さらに一方で、超強磁場発生法についても、このような超高速分光などと組み合わせることができるようになるべく簡便に磁場発生ができるように開発を行った。超強磁場発生法の1つである電磁濃縮法は、これまで磁場発生に非常に大きな労力を伴うものであった。磁場発生に必要な労力を軽減するよう磁場発生システムを簡略化できれば、より複雑な測定法とも組み合わせて実験を行うことが可能となる。しかし、これを行うことで磁場発生の再現性などが損なわれてはならない。電磁濃縮法はプライマリコイルとライナーから構成される。我々は、今回、銅コイルを鉄コイルの内側に貼り付けた構造を持つ新コイルを開発することで、再現性よくかっより簡便に磁場発生が可能となった。
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