研究概要 |
本研究では酸化亜鉛(ZnO)微粒子を光導波路内に埋め込み、微粒子内の励起子分子を用いたレーザー発振の観測とその機構の解明を目指してきた。さらに,光ファイバー等の利用によってフォトニック結晶への応用を模索してきた。 最終年度にあたる今年度は光共振器内に埋め込んだZnO微粒子について様々な観点からそのレーザー特性を調べた。試料は2枚の石英板間の狭い隙間にZnO微粒子を含むアルカリハライド(KC1)を埋め込んだもので,ファブリ・ペロー型光共振器構造を有している。高密度光励起下でのフォトルミネッセンスの測定によって、この試料では励起子分子発光帯内の3.33eVのエネルギー位置に単一の鋭い発光線が明瞭に観測された。この発光線は励起光強度の増加とともに約0.5MW/cm^2のしきい値をもって増大し,広がり角が0.06radと極めて狭いなどレーザーとしての顕著な特徴を有することが判明した。また,約100K以下の温度領域でのみ観測され,励起子分子との相関がみられるなど,この発振が励起子-励起子分子状態間で引き起こされる反転分布に伴う誘導放出によるものと結論づけられた。さらにレーザー一般にみられる共振器長と発光波長との関係も明らかにすることもできた。 次にフォトニック光ファイバー内にZnO微粒子を埋め込んだ試料を試作した。その光学的性質を調べたところ,特徴的な発光線は観測されるものの明瞭なレーザー発振は観測されなかった。この原因については未だよくわからない点も多いが,ファイバー自身の特性や微粒子サイズの制御が不十分であったためと考えられ,この系については今後の課題も残した。 本研究を通して,ZnO微粒子を埋め込んだ光共振器の新たな作製方法の確立を行うとともに,励起子分子に関連したレーザー発振の特性について多くの知見が得られた。
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