研究概要 |
平成18年度については、パイロクロア型酸化物超伝導体AOs_2O_7(A=K,Rb,Cs)と層状酸化物Li_xCoO_2を研究対象とした。AOs_2O_7系については、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いて高圧力下で直流磁化測定を行い、T_Cの圧力依存性を調べた。特に今年度は強化型ガスケットを用いて上限圧力を10GPa以上と飛躍的に上昇させた。その結果、RbOs_2O_7(T_C=6.3K)については、加圧に対してT_CがT_<Cmax>〜8.7Kまで上昇し、その後3〜5GPaの範囲では圧力に依存せず一定となり、5GPa以上では下降することがわかった。また、CsOs_2O_7(T_C=3.3K)においても、Tcは加圧により上昇し7GPa程度でRb系と同様にT_<Cmax>〜8.7Kに到達し9GPa程度までは一定であることが確認された。KOs_2O_7(T_C=9.6K)においても加圧に対するT_Cの極大(T_<Cmax>〜9.9K)は観測される。しかしT_Cを格子体積Vに対してプロットすると、RbOs_2O_7とCsOs_2O_7の類似性が際立つ一方で、KOs_2O_7のT_C-Vの関係はそれらと別物であり、Kos_2O_7の超伝導の特異性が浮彫となった。また、Li_xCoO_2については、試料の単結晶化に成功し、電気抵抗や磁化に異常が見られるT_S=170K以下での磁化の振舞が、急冷後と徐冷後で大きく異なることを新たに発見した。これまでは、T_S=170Kでの転移は構造相転移に伴うスピン転移であるというシナリオを抱いていた。しかし、今回発見した事実は、170KでLi^+イオンの秩序化(液相-固相転移)が起こり、低温での秩序が急冷と徐冷で異なる(ガラス転移?)ということを想像させる。
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