研究概要 |
交付申請書に記載した研究目的および本年度の研究実施計画に基づき,本年度はCalogero模型並びにCalogero-Moser模型に対する超可積分離散化の研究,およびソリトン方程式に附随する確率過程の構成法に関する研究を進めた.その成果並びに進捗状況は以下の通りである. (1)先行研究において研究代表者が与えたCalogero模型およびCalogero-Moser模型の極大超可積分性を保つ時間離散スキームは,解の性質を含め時間連続の系の性質を忠実に再現出来る利点があるが,この点では難のあるNijhoff-Pang, Surisによる可積分離散化のように,一般の粒子数について差分スキームを明示的に書き下すことの出来ない欠点がある.そこで,前者のスキームで明示的に差分スキームを書き下すことの出来ている2体の場合のスキームの,一般のN体の場合の近似離散スキームとしての利用を検討し,離散近似としての精度を調べた. (2)Sine-Gordon方程式と非線型Schroedinger方程式に対応させて,前年度の研究において構成した伊藤拡散仮定の間の関係を調べた.その結果,両者の間に,元のソリトン方程式を関係づける逓減摂動法による関係と全く同様の関係が成り立つことが分かった.この試みは,ソリトン方程式の記述する非線形光学や物性物理学における様々な現象を視覚的に記述する新たな処方箋を,ここのソリトン方程式に対して各論的に与えるのではなく,統一的な視点からの構成法を与えうる可能性を示唆している.またCalogero模型やCalogero-Moser模型の初期値問題の解法である射影法を確率量子化の手法で量子化するための先行研究としての意味も持つ.
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