研究概要 |
マグマ溜りの深さとカルデラ径の解析解を猪牟田カルデラ(大分県)に適用し、モデルの有用性と限界を考察した。 猪牟田カルデラは、耶馬溪火砕流および今市火砕流の噴出源であり、安山岩質地殻で形成された漏斗型埋没カルデラである。このカルデラは地下7〜12kmにマグマ溜りをもち、カルデラ壁の断層傾斜角はおよそ60°であることが、地質学的見地から推定されている(Kamata, 1989, Bull.Volcanol.)。ここでKamata (1989)は、第四紀西南日本弧で漏斗型カルデラを形成したマグマ溜りの深さは6〜10kmの間に分布することに着目し、深さ7〜12kmのマグマ溜りを推定している。実際、Aramaki (1971)は、入戸火砕流を噴出したマグマ溜りの深さを7〜10kmと推定している。 昨年度の研究で得られた解析解より、環状断層の傾斜角が60°である場合、マグマ溜りの深さ(d)と半径(a)の比(a/d)は0.55となる。安山岩質地殻のポアソン比を0.20、内部摩擦角を30°と仮定すると、マグマ溜りの深さとカルデラ半径(r_c)の間にd=0.89r_cという関係式が成り立つ。この式に猪牟田カルデラの半径r_c=4.5kmを代入するとd=4kmを得る。また、a/d=0.55よりa=0.55dが得られ、マグマ溜りの半径(a=2.2km)が推定される。このモデルが正しいかどうかを確かめるため、入戸火砕流の噴出源である姶良カルデラのマグマ溜りの深さを推定したところ、d=8.5kmを得た。この値はAramaki (1971)と調和的である。 以上より、猪牟田カルデラは深さ4km、半径2.2kmのマグマ溜りが崩壊して形成されたカルデラであり、弾塑性理論に基づく本モデルが地質学的な問題にも適用できることが示された。
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