研究課題
若手研究(B)
本研究では福島県沼沢火山の5000年前に起きた火砕流噴火後(沼沢湖噴火)に発生したラハール(火山泥流・土石流・洪水流)を研究対象とし、噴火後に起こる突発的かつ破局的なラハールの発生過程およぴ性質(流量・物質運搬量・時間空間的変化)を暴くこと、水流作用による火砕物質の大量輪送がどのくらいの範囲に及び、どのくらいの時間、周辺環境に影響を及ぼすのかを明らかにすること、を目的とした。前年度までに、沼沢湖噴火にともなう火砕流堆積物によるせき止め湖の形成と、そこから発生した大規模な決壊洪水についてその発生に至る過程と洪水流量が明らかとなった。本年度は沼沢火山から最も遠方となる新潟平野縁辺から中心におけるラハール堆積物に調査の焦点を当て、既存のデータと照合しながらより詳細な堆積物の分布が明らかとなった。沼沢火山より風下側にあり、かつ100km以上下流に位置する新潟平野域においても、沼沢湖噴火起源のーラハール堆積物が3-5m堆積し、堆積盆縁辺部では当時段丘面に立地していたと考えられる遺跡の埋没が起こり、堆積盆中心部では当時め静穏な堆積環境が一時的に活動的網状河川システムに変化したことが明らかとなった。またこの地域は初生的な降下火山灰の影響をほとんど受けていないが、決壊洪水を含めたラハールによる影響を多大に受けたことが地層から判断できる。このことは初生(噴火)堆積物の分布のみで火山災害をとらえると、その後に発生しうるラハール災害を見落とす危険性があることを顕著に示している。また、本研究では沼沢湖噴火後のラハール堆積物の詳細な分布が明らかとなり、活火山にも指定されている沼沢火山のハザードマップ作成において重要な基礎的情報を提供する。これらの成果は国内の学会や国際学会で発表し、国内および国際雑誌に論文を投稿した。
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