研究概要 |
今から25億年以上前に存在した,地球上で最も古い集合大陸であるウル(Ur)大陸は,現在のKaapvaal,Napier,Dharwar,Bhandara,Singhbhum,PiIbaraなどの始生代クラトンから構成されたと考えられている。特に,30〜25億年前の地殻で構成された東Dharwarクラトンは,ウル大陸中央部における沈み込み帯の広がりおよびその特徴を解明する上で重要な地域である。本年は,この地域から採取した中性〜塩基性岩脈および酸性深成岩類について,岩石記載および化学分析行い,特に,酸性深成岩における東西方向の元素組成および同位体組成の変化を明らかにした。この変化は沈み込み帯の活動のみでは説明が付かず,マントルプリュームの上昇などのプロセスも関与している可能性が明らかになった。また,ウル大陸全体の特徴を明らかにするために,KaapvaaIおよびSinghbhumクラトンに産する堆積成および火成変成岩類を入手し,Dhawarクラトンとの対比が可能かどうか検討も行った。その結果,特に,Singhbhumクラトンの火成変成岩類は島弧に特徴的な地球化学的性質を持つことが明らかとなった。また,Nd同位体分析の結果は,これら岩石が,東Dhawarクラトンの付加年代より古い,始生代中期(35〜31億年前)のNdモデル年代を持つことを明らかにした。現在の沈み込み帯の活動範囲を考慮すれば,Ur大陸全域で同時に沈み込み帯の活動があったとは考えにくく,この年代の相違はUr大陸における沈み込み帯の活動域の変化を示していると考えられる。今後の更なる詳細な研究は必要ではあるが,本研究により,始生代中期から原生代にかけた,Ur大陸の中心部における,活動プロセスの概要が明らかになった。
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