研究概要 |
東アジアにおける三畳紀二枚貝化石の種構成や生存期間を明らかにし,古生代末期大量絶滅後の二枚貝化石群集の回復から放散過程を明らかにすることが研究の目的である.本年度は北ベトナムのランソン省に分布するAn Chau堆積盆地で主な調査を実施した.中でも下部三畳系インデュアン階のLang Son層とオレネキアン階のBac Thuy層,および中部三畳系アニシアン階〜ラディニアン階のNa Huat層では,層序学的な調査に加えて,堆積学的なデータの採取や化石の採集をおこなった.その結果インデュアン階からオレネキアン階の下部では,Claraiaを主体とする二枚貝化石群が識別され,これらの化石群は少なくとも100万年以上に渡って表生種のみで群集構成を維持していたことが明らかになった.またこのような群集構成は,外浜〜外側陸棚あるいは海盆にかけて広域的に認められた. 一方で中部三畳系アニシアン階の上部では,CostatoriaやTrigonodusなどの内生種を主体とする化石群集が識別でき,様々な種からなるCostatoriaが内側陸棚や外側陸棚あるいは炭酸塩プラットフォームで確認できた.これは二枚貝の種数が前期三畳紀と比べて著しく増加していることやCostatoriaの多様性が増していたことを表しており,二枚貝化石群集の回復から放散が,おそらくオレネキアン期からアニシアン期中期に生じていたことを示すだろう.なお,オレネキアン期には,ClaraiaかPosidoniaあるいは多様性の低いCostatoriaを主体とする二枚貝化石群集が認められた. 論文や学会による研究成果の公表については,概ね目的を達成することが出来たが,中国やベトナム以外の地域との比較については,課題が残されたため,今後も研究を継続し,平成20年度中に新たに論文を執筆することを目標とする.
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