研究概要 |
惑星中心核の物性や初期惑星内部における核形成過程を理解するためには、広範な温度圧力領域における核構成物質の粘性測定を行うことが重要である。本研究では、中心核を構成するとされる鉄-軽元素系合金のうち、有力な軽元素と考えられる硫黄、炭素に注目し、Fe-S, Fe-C融体の粘性を、世界最高の測定条件である16 GPa,1843Kまでの温度・圧力条件で測定することに成功した。実験は、大型放射光雄設SPring-8ビームライン04B1のマルチアンビル高圧装置を用い、試料中のマーカー球の落下速度、をCCDカメラによりその場観察するX線影像落球法を用いて粘性測定を行った。高圧発生用に開発した超硬アンビルの朱端サイズ5mmのセルを用いた。ヒーター材質乏しては、肉厚を薄く加工したランタンクロマイドを使用した。また粘性マーカーのRe球と鉄合金試料との化学反応を防ぐために、RFスパッタ装置を用いて、Re球を厚さ1-2ミク-ロンのアルミナでコーティングした。このように碓立された高圧セルを用いて、取り込み速度が最高125プレーム/秒の高速度カメラと組み合わせることにより、Fe-S, Fe-Cメルトの粘性を測定し、その圧力依存性を精度良く求めることができた。 Fe-S共融組成メルトは、16 GPa,1798Kまでの温度・圧力条件において、粘性係数は3.2-8.6 Pa-sとなり、その圧力依存性すなわち粘性流動の活性化体積は、1.46cm^3/molと非常に小さいことが明らかとなった。一方、Fe-Cメルトについては、4.5GPa,1843Kまでの条件において、粘性係数は1.7・7-6 Pa-sとなり、その活性化体積は1.20cm^3/molということがわかった。これにより、Fe-S, Fe-Cメルトの粘性の圧力依存性は、いずれも小さく、大差ないことが明らかとなり、惑星内部においても核メルトの粘性は非常に小さいと推測される。
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