研究概要 |
昨年度の成果により,電極間距離数十〜数百μmの微小ギャップとHeガス流を用いることで,100ns以下程度の高電圧短パルス駆動により大気圧下においても大電力過渡グロー放電の実現が可能であることがあきらかとなった。しかし,過渡グロー放電の維持時間も数10ns程度となってしまい,放電への平均注入電力の増加を実現するためにはMHzを超える高繰り返しパルス印加が必要となり,既存のパワーエレクトロニクスデバイスでは困難な領域となってしまう。そこで,本年度は,チップ型積層セラミックコンデンサを非線形容量として用いた非線形伝送線路により高速バーストパルス列を生成し,MHz帯の高速バーストパルス駆動の可能性を検証した。非線形伝送線路中では,伝搬する高電圧パルスは非線形波動として伝搬し,その波形は孤立波と呼ばれる短パルスへと変化する。非線形伝送線路への入力パルスが,孤立波のパルス幅よりも長い場合,その出力波形は複数の孤立波が連続した高速パルス列となる。この波形整形効果は受動素子である非線形容量と線形インダクタのみで実現できることから,動作繰り返し周波数の上限も高く,弱電分野における高速パルス生成にも利用されえいる技術である。筆者らは,非線形容量としてチップ型セラミックコンデンサを複数個直列で用いる手法を確立し,非線形伝送線路の高電圧化に成功した。本研究で試作した非線形伝送線路は,半値幅40ns,パルス間隔60ns,波高値2kVのパルス列生成が可能である。パルスフォーミングネットワークを利用したパルス電源と微小ギャップ放電負荷との間に,この非線形伝送線路を接続することにより,アーク放電への遷移確率を低減しつつ,放電への平均注入エネルギーの最大値を1mJから1.7mJへ増大させることに成功した。
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