研究概要 |
本研究の目的は,異常粘性をもつプラズマの回転流に伴う不安定性について磁化プラズマ中の渦の一種であるプラズマホール構造を用いて実験的に研究することにある.プラズマホール構造は高密度ECRプラズマ発生装置であるHYPER-I装置中に自発的に形成される.前年度に引き続き,径方向の力の釣り合いを考えることで流れ構造の詳細な解析を行った.周辺部と比べて著しくプラズマ密度が減少しているホール領域では,純電子プラズマの高速回転モードと同様にローレンツ力と遠心力の釣り合いが流れ場を決定している.Krieselらによって古典粘性の10の8乗倍に達する純電子プラズマの異常粘性が報告されているが(Phys.Rev.lett.87(2001)135003),異常粘性の起源は未だに解決されていない.プラズマホールの異常粘性の起源として電場の不完全な遮蔽が考えられるが,解明には長距離相互作用を考慮した衝突輸送理論等の更なる研究が不可欠である.プラズマホールの密度遷移領域において20kHz以下の低周波領域にブロードなスペクトルとして観測される揺動について計測を行った.密度揺動と電位揺動はほぼ逆位相になっており,コヒーレントな不安定振動ではなく間欠的なスパイク状の信号として観測された.この信号はドリフト波のような静電不安定というよりも,磁場閉じ込め核融合プラズマ実験装置の周辺部で観測されるプラズマの固まり(Blob)の吐き出しのような輸送現象との関連が考えられる.大きな密度勾配が存在する領域でのプラズマ輸送という観点から,今後研究を進めていく必要がある.
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