研究概要 |
"光増感剤にラジカルを用いた金属錯体のエネルギー移動解明と新規発光理論の構築"の研究を行う上で、平成19年度は平成18年度に引き続き、ラジカル錯体を含めたナノハイブリッド発光素子の構築とエネルギー移動解析をおこなった。ホストには1.3nmのナノ細孔を有するゼオライト(FAU)を選択し、ゲストには、増感分子と発光種を選択し、ゲスト間を近距離固定化することによって高効率なエネルギーを経た発光増感系の構築をおこなった。増感分子には、ラジカル(NIT2imH,NIT2py,IM4imH,IM2py)、化合物半導体(CdS)、錯体(Ir錯体)、有機分子(acbp,bzp)を選択し、発光種には長寿命、色純度の高い希土類イオン(Eu(III),Tb(III),Yb(III),Nd(III))を用い、それぞれをナノ細孔内に気相法と液層法の2つの手法で導入を行った。 このナノハイブリッド発光素子により、同じ細孔内でのエネルギー移動による増感発光に成功したが、エネルギー移動メカニズムが通常の分子のものとは大きく異なることが明らかになった。本年度は特に順エネルギー移動と逆エネルギー移動の解明を行った。寿命の温度依存性測定を行い、アレニウスプロットにより活性化エネルギーを算出し、遷移状態理論を適用しエネルギー障壁ΔG^*を算出した。通常の増感発光系に比べて、本ナノハイブリッド系のエネルギー障壁ΔG^*は大きいことが明らかになった。 本研究により、次世代発光素子として期待されるホストーゲストを用いたナノハイブリッド系の、エネルギー機構解明に一歩前進したといえる。本系は全く新しい系であるので、今後、さらなる研究が必要とされる。
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