研究概要 |
1.アンモニア分子の振動励起 NH_3分子について,赤外自由電子レーザー(FEL)を照射した際の主確な振動励起効率を見積もる実験を行った.ν_2モードに共鳴する952cm^<-1>のFELをNH_3のパルス分子線に照射し,多光子共鳴イオン化(REMPI)法で励起効率を測定したところ,最大30%にも達することが明らかとなった.このような高励起効率を実現できたことは,アンモニア+二原子分子の系で振動前期解離実験を遂行することが有望であろうことを示唆する結果となった. 2.ヨウ化メチル分子の振動励起 CD_3I分子の振動励起を行い,励起効率,段階的多光子吸収の可否,および振動励起による解離経路の操作について検討する実験を行った.CD_3I分子に紫外光(波長約280nm)を照射すると,(A)CD_3I+hν→CD_3+I^*(^2P_<1/2>)ならびに(B)CD_3I+hν→CD_3+I(^2P_<3/2>),の光解離反応が誘起され,FELを入射しない場合,2つの解離チャンネルのうち(A)が支配的である.FEL光によって基底状態で基準振動(具体的にはν_2モード952cm^<-1>ならびにν_5モード1049cm^<-1>)を励起し,解離生成物であるCD_3ラジカルまたはI原子をREMPI法で検出した.この結果,(A)(B)の分岐比を20-30%変化させることが可能であり,入射するFEL波長に依存してその変化が大きく異なることが明らかとなった.この分岐比はFEL光とUV光との偏光面の関係やUV光の周波数など多くのパラメータに依存しており,現在までに反応機構の詳細を理解するに至っていない.生成物の速度・角度分布を同時測定するなどより多くの情報を抽出できるような実験が必要であることを示唆している.
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