研究概要 |
近赤外スペクトルに現れるバンドはブロードで,しかも倍音だけでなく結合音やフェルミ共鳴によるバンドなどが複雑に重なり合い,各バンドの帰属はもちろん,ピーク波数や強度を正確に決めることすら困難である.そこで本研究では電場変調分光法を導入した.試料に交流電場を印加すると,各バンドはシュタルク効果によってシフトやブロードニングを起こす.これは各振動モードの配向分極および電子分極を反映するので,各々のバンドで度合いが異なる.これを利用してバンドの帰属および基本音とn次の倍音バンドの対応を明確にすることを主目的とした.平成18年度の成果は以下の通り.1.印加電場の最適化:電極の配置法やセルの設計を行うにあたり,印加電場強度の条件の条件出しを行い,最適な電圧を発生するためのアンプ回路の製作を行った.0〜8kV/cmの静電場印加に伴い,アルコールのOH伸縮振動のピーク波数がシフトすることを確認した.2.表面プラズモン共鳴近赤外分光法との組み合わせ:研究代表者が以前開発した表面プラズモン共鳴近赤外(SPR-NIR)分光法は金属薄膜(厚さ10nm程度)近傍の試料の倍音・結合音吸収を高感度に捉える処方である.前年度の研究から分子の異方性や光学活性を考慮することの必要性が認められた.本年度はLB膜の異方性検出に成功し,吸収応答電場が面外方向に特徴的であることを確認した.ただし薄く且つ表面が不均一な金薄膜が電極となることから誘電破壊が避けられず,正常な電場変調スペクトルは得られなかった.
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