研究概要 |
本研究の目的は、よく規定された固体表面に吸着した異種分子間の相互作用に関する詳細な知見を与える、新しい表面振動分光法を開発することである。今年度は以下の成果を得た。 前年度構築した2つの異なる波長の中赤外光を固体表面に照射し、発生する赤外-赤外-可視の和周波を検出するシステムを超高真空中の氷薄膜に適用した。 市販のTi:Sapphire再生増幅器(Spectra physics, spitfire-pro, 130fs, 2mJ/pulse, 1kHz)の出力を3つにわけ、1つを市販のOPG/OPA(TOPAS)および差周波発生によりフェムト秒中赤外光(2〜10μm)に変換する。もう一つの出力の一部をKTA結晶中でパラメトリック変換を行い、2.5〜3.7μmの赤外光を得た。残りの再生増幅器からの出力は幅2ps、中心波長800mmの'可視光'とし、上記2つの赤外パルスとともに超高真空中の試料表面にCaF_2レンズを用いて集光した。試料からの和周波信号を、フィルター、分光器を通して液体窒素冷却CCDにより検出した。 上記システムを、超高真空中の白金表面に成長させた氷薄膜(膜厚50〜100分子層)に適用し、2つの赤外光の波長を氷のOH対称伸縮および反対称伸縮振動に共鳴させ、2つのモードの非調和結合に起因すると考えられる和周波信号の観測に成功した。これらの成果は、日本化学会第87回春季年会で発表済み(3G1-28)、また現在査読つき欧文誌に投稿準備中。
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