研究課題
若手研究(B)
溶解度の向上を図ったビスt-Bu置換キノン2量体の合成は一定の成功を見、X線構造や還元電位の測定を行った。しかし合成された化合物は、(1)置換基間の立体反発のためにπ共役系が非平面性を有する、及び(2)t-Bu基導入にもかかわらず若干の不安定性を有する、といった欠点が見出された。そこでキノン環の間にアセチレン部位及びジアセチレン部位をスペーサーとして導入した、新たな2量体の合成を行った。その結果、π共役系がほぼ平面構造であることをX線回折により明らかにした。ただし還元電位は、スペーサー導入前とほとんど変わらなかった。π共役系の平面性が向上した結果、種々のπドナー化合物との間に電荷移動錯体を形成することがわかった。その他、フェニル基やチエニル基、ビニル基をスペーサーとした各種誘導体の合成についても検討した。一方、t-Bu基の導入位置を変えた誘導体を合成し、それらの安定性及び溶解性を検討したところ、導入位置の違いによってかなりの挙動の違いが観測された。これらは分子の安定配座の違いと、それによる極性の違いによって説明できる。また、長時間アルコール溶媒中で加熱することにより分子内環化反応が起こりキノン2量体が壊れる様子が観測されたが、これにも置換基位置の違いが見出された。3量体以上のオリゴマーでは、2量体以上に溶解性や安定性の問題が大きくなってくるため、本研究により得られた知見は、今後キノンオリゴマーを設計・合成するための有用な指針になると考えられる。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (8件)
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