研究概要 |
ナノメートルサイズの導線としての応用が期待される鎖状多核金属錯体を任意の鎖長で合成する一般性の商い手法の開発には興味が持たれる。本研究ではカチオン性アミン錯体の脱プロトン化により生成するアミド錯体のオリゴメリゼーションにもとづくアミド架橋鎖状n核錯体(n=2,4,8,16…)の合成を計画した。テトラキスペンタフルオロフェニルボレートを対アニオンとする有機溶媒に可溶なPd(II)テトラアンミン錯体[Pd(NH3)4][B(C6F5)4]2を新たに合成するとともに、その脱プロトン化を行うことにより、アミドアニオンNH2を架橋配位早とする新規な2核パラジウム錯体[Pd2(NH3)4(NH2)2][B(C6F5)4]2を定量的、に得ることに成功した。X線構造解析の結果、2つの金属イオンは2個のアミド配位子によって架橋されており、金属原子間距離は、およそ3.0オングストロームであることが分かった。さらに、単離した2核パラジウムアミド錯体の脱プロトン化を行なった結果、2核アミド錯体の2量化が進行し、4核パラジウムアミドクラスター[Pd4(NH3)6(NH2)6][B(C6F5)4]2が得られることを明らかにした。X線構造解析を行なった結果、4個の金属中心は平面状に配列されており、金属原子間距離は約3.0オングストロームであることが分かった。以上の結果は有機溶媒に可溶なジカチオン性アンミン錯体の連続的な脱プロトン化が、多様な金属配列をもつアミド架橋多核構造を構築するための方法として有効であることを示している。今後、8核、16核などより大きな金属骨格をもつ錯体の合成を進めて行く。
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