研究概要 |
高分子混合物の表面・界面における組成がバルクのそれと著しく異なっていることはよく知られているが、表面・界面における高分子鎖一本の形態を理解するまでには至っていない。これらを明らかにするためには、重水素ラベルを施したような標識となる分子鎖を、高選択的に表面のみに偏析させる技術を確立することが重要となる。本研究では、構成成分のブロック共重合化に着目し、分子鎖の表面に対する偏析力に及ぼすブロック共重合化の影響について明らかにすることを目的とする。 今年度は、相溶性ポリマーブレンドの組み合わせである、ポリ(4-トリメチルシリルスチレン)(hT)とポリイソプレン(hI)とそのブロック共重合体(TI)を加えた3成分系のブレンド膜表面における組成および濃度プロファイルを評価し、TホモポリマーとTIに含まれるT成分の表面濃縮のし易さについて比較した。試料として、hT、部分重水素化ポリ(4-トリメチルシリルスチレン)(dT)、hI、hTIおよびdPT-hPIブロック共重合体(dTI)を使用した。hT,dT,hI,dTIおよびhTIの分子量はそれぞれ、34k,43k,llk,82kおよび63kである。TはIと比較して低い表面エネルギーを有している。ホモポリマーを重水素ラベルしたdT/hTI/hIブレンド、および、ブロック共重合体を重水素ラベルしたhT/dTI/hIブレンドの二種類をスピンコーティング法により調製した。各成分の体積分率は1:1:1としたため、膜全体のTとIの比は1:1である。膜の深さ方向の組成分布を中性子反射率測定により評価した。hT/dTI/hIブレンド膜表面では、dTI中のdT成分の表面偏析は観測されなかったが、dT/hTI/hIブレンド膜表面には、hIよりも表面自由エネルギーの低いdTが選択的に濃縮した。以上の結果より、TIブロック共重合体中のT成分の表面偏析力はI成分とのブロック共重合化により著しく減少し、ブレンド膜の表面にはTホモポリマーを選択的に濃縮させられることが明らかとなった。
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