研究概要 |
本研究は,リビングラジカル重合法のひとつであるニトロキシド制御/リビングラジカル重合(NMP)を超臨界二酸化炭素媒体(scCO_2)系に適用する世界でも初めての取り組みである。昨年度は,超臨界系ではNMPを不均一系で行うという難しさや,scCO_2流体系における分散安定剤の選定も必要であることから,各種重合因子の詳細な検討を行い,分散重合系における最適な重合条件を見出すことができた。本研究は特に,重合処方が最もシンプルな沈殿重合系でスチレンの重合を行った。開始剤としてはAIBN,安定ラジカルとしてはthe nitroxideN-tert-butyl-N-(1-diethylphosphono-2,2-dimethylpropyl)(SGI)を用いた。SGIや開始剤濃度などの重合処方・条件の検討を詳細に行ない,110℃,approx.42Mpaのもと72時間の重合を行った結果,固形分温度40%という高濃度の系でも,SGIを大過剰量用いることにより,重合率92%に達し,真っ白い粉末としてポリスチレンを得ることができた。その分子量は重合の進行に伴い増大したが,分子量分布は比較的狭いまま(M_w/M_n<.33)を維持し,リビング性を持って重合は進行した。重合条件の更なる最適化を目指したところ,30%過剰なSGIを用いることにより,48hの重合で重合率が60wt%に達成できることを明らかにした。高重合率を達成するためには,従来のNMP-SG1重合系よりも高温で重合を行わないといけないが,scCO_2流体中での重合においては,非リビング重合系の沈殿重合において報告されている,重合率が上昇しないという問題点と対照的であり,scCO_2流体中のリビング重合系特有の大きなアピールポイントである。今後の更なるNMP系の発展において,重要となる指針を得ることができた。
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