研究課題
若手研究(B)
昨年度は、中性子小角散乱測定(SANS)と同時に紫外可視吸収スペクトル(UV-Vis)測定とゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行うための装置の整備と手順の確立を行い、ホモポリスチレン、ホモポリイソプレンなどの比較的コンベンショナルなリビングアニオン重合系についての検討を行っていた。本年度は、昨年確立した装置と手法を用い、より発展的な検討を行った。すなわち、触媒研究の最先端で検討されているフォスファゼン触媒によるメチルメタクリレート重合系について、触媒・助触媒・重合末端が形成する超分子構造という観点から検討を行い、新規触媒開発の鍵となる触媒分子およびリビングポリマーの会合状態を明らかにした。触媒溶液のSANS観察では、半径1.1-1.8nmの球の形状因子でフィットされる散乱曲線が得られた。PZN1分子の大きさは半径約0.6nmであるので、溶媒中で数十のPZN分子が会合して存在しているものと考えられた。リビングポリマー溶液のSANS測定では、溶液中には会合していない単独のリビングポリマー鎖がPZN会合体と共存していることが明らかとなった。このことから、リビングポリマー鎖とPZN触媒の間には強い相互作用は存在しないことが推測された。この結果はアルキルリチウム化合物を開始剤として用いた非極性溶媒中でのリビングアニオン重合とは対照的である。アルキルリチウム系ではリチウムイオンと重合末端のカルバニオンの間の強い静電相互作用により重合末端が集合し、リビングポリマーはスターポリマー状の会合体として存在する。一方本系のPZNカチオンは電荷密度が極めて小さいことからリビングアニオン末端との相互作用が非常に弱く、このような会合体は形成されなかったものと考えられる。PZN触媒が有機金属化合物触媒に比べて極めて高い反応活性を示す原因の1つは、上述のような末端の会合状態の違いにあると推測された。
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J. Appl. Cryst. 40
Physica B 385-386
ページ: 752-755
ページ: 742-744
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