研究概要 |
ベッコウバチをはじめとする単独性カリバチは、ハチの種類によって決まった種類の昆虫(あるいはクモ)をとらえ毒針で麻酔した後、自分の幼虫のための「生きた動かない餌」とする。このような単独性カリバチ毒が引き起こす麻痺現象は広く知られているにも関わらず、毒液成分の化学的研究例は少ない。筆者らは、単独性カリバチのなかでも大型のクモを狩る、オオモンクロベッコウに注目し、MALDI-TOFMS,ESI-QTOFMSなど質量分析をはじめとする高感度構造解析、ジョロウグモを用いた麻痺活性試験などを用いて、毒液に含まれる麻痺活性物質の探索および構造決定を目指してきた。今年度は、クモを用いた麻痺活性試験で活性を示す画分が得られたため、その成分分析を行った。逆相HPLC、SDS-PAGE、データベースと組み合わせた質量分析等の分析結果、その主成分は新規蛋白質であることが分かった。さらにその蛋白質の酵素消化を行い、MALDI-TOFMSとESI-QTOFMSを用いて消化ペプチド断片のMS,MS/MS分析を行なうと供に、HPLC精製できたペプチドに関しては、微量プロテインシークエンサー分析の結果も併せてアミノ酸配列を決定した。その部分アミノ酸配列を基に遺伝子のクローニングを行い、新規蛋白質の全アミノ酸配列を得たところ、ミツバチ由来のヒアルロニダーゼと高い相同性を持っていることがわかった。
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