研究概要 |
平成18年度は,本年度の目標であったワイドギャップ半導体光デバイス(GaN系,ZnSe系LED)のaging試験を行い,素子劣化を律速する増殖性欠陥に焦点を当て実験を進めた.以下に本年度の研究実績を記す. (1)GaN系深紫外LEDに関して 実際のGaN系LED素子の活性層中に存在する(電気的に活性な)欠陥準位を検出することができた.この欠陥準位にフォーカスし,GaN系紫外LED素子を加速劣化試験(150mA,450K)しながら,その光出力の低下とその深い準位の濃度を系統的に測定した.現在は,劣化メカニズムの解明に必要な(系統的かつ定量的な)データを蓄積している段階である.今後,本研究を基に,素子劣化の物理的メカニズムの解明を行い,素子寿命の人工的制御手法を提案する予定である. (2)ZnSe系白色LEDに関して ZnSe系白色LEDにおいて,前年度克服したp型クラッド層中で発生するミクロ点欠陥H0中心(p型ドーパントである窒素の複合欠陥,E_V+E_T=600meV)による劣化(第1ステージ)の後,それとは全く異なる欠陥種が新たに劣化を引き起こすことが判明した(第2ステージ劣化,素子寿命〜1000時間).この第2ステージ劣化は,本研究より,活性層上部のp型クラッド層中で増殖するドナ型の補償欠陥によって,劣化が進行することが分かった.この欠陥増殖は,欠陥準位での電子・正孔再結合(電子系のエネルギー)と格子系の熱エネルギーとの融合により異常促進されることが判明した.本劣化を人工的に抑制するために,新しい欠陥制御手法:電子・正孔再結合を抑制するためのp型層への電子ブロック層:2重クラッド層の採用により,この劣化を抑制し,素子寿命1万時間(室温)を達成することに成功した. (3)ZnO系結晶に関して ミクロ点欠陥の立場から,ZnOエピタキシャル薄膜結晶の基板付近において,ノン・ドーピングでの自由電子濃度が10^<19>cm^<-3>以上あると見積もられた.この基板界面の結晶の情報を得るために,マクロ欠陥の研究に立ち返り,透過型電子顕微鏡(TEM)測定を行った.ZhO基板から伝播するc軸配向した転位が直接観測され,バッファ層・基板界面からエピタキシャル薄膜上部に向かうに伴い,結晶品質が改善傾向にあることが確認された.これは成長中にモニタした反射高速電子回折(RHEED)の観察結果と一致した.現在,長時間成長したZnOエピタキシャル薄膜結晶のエピ上部のマクロ・ミクロ欠陥の評価を行っており,欠陥の基礎データの蓄積(素子劣化を制御するための基礎情報の取得)を行っている.
|