研究概要 |
引き続き、構造相転移の機構解明のため、種々の条件で相転移の挙動を可視光反射スペクトルで観察した。相転移の挙動は、会合体が浮かぶ下層液にある2種の金属イオンの混合比、下層液温度、イオンの組合せに依存し、相転移すると会合体のスペクトルが変化する。イオンの組合せは、(Mg2+,Cd2+)、(Zn2+,Cd2+)、(Mg2+,Sr2+)と(Mg2+,Ca2+)について行った。スペクトルの違いから、(Mg2+,Cd2+)と(Zn2+,Cd2+)の場合はtypeI, II, IIIの相が、(Mg2+,Sr2+)の場合はtypeI, II, IVの相がイオン混合比と温度の相図に表れることを明らかにした。一方(Mg2+,Ca2+)の場合にはIIとVの相が種々の条件で共存するということが分かった。そして、色素に配位したイオンの水和の効果が会合体形成に重要であることを明らかにした。 放射光を用いた斜入射X線回折法により、上記の種々の相は構造が異なることを明らかにし、相転移のその場観察では回折ピークがシフトすることを明らかにした。構造解析が行えた会合体について、その励起子吸収帯の準位を計算し、構造と吸収帯の関係を明らかにした。また、回折装置の分解能を評価し、回折ピークの広がりから会合体のサイズを明らかにした。会合体の大きさが100nm以下になると吸収帯をシフトさせることを観察し、色素結晶のサイズ効果を定性的に説明した。 光学素子を目指し、J会合体ドープシリカやその原料のJ会合体分散液の作製法の改良を行った。以前に報告したJ会合体の濃度とシリカの透明性に比べ、濃度は5倍高くなり、透明性も向上した。また、作製時に生じる色素の退色を低減させることに成功した。その結果、ドープシリカが示す非線形光学効果も増大し、会合体をドープした効果が顕著になった。
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