研究概要 |
緑色発光SrGa_2S_4:Eu蛍光体を薄膜化し,その薄膜の状態を積層及び混層で作製し,それぞれの発光特性ならびに光学特性から,電子線の侵入領域について評価を行なった。各蒸発源材料として,SrS:EuならびにGa_2S_3ペレット圧力成型により作製し,これらを二元電子ビーム蒸着法により,それぞれ独立に蒸発制御することにより,それぞれの膜厚や積層状態・混層状態を制御した。総膜厚は1,000nmと一定とし,積層の膜厚については10~500nm,交互の2層~10層の間で変化させた。また,混層においては,SrS:Eu/Ga_2S_3の供給比を0.65~1.5の間で変化させた。蒸着した薄膜を硫化水素雰囲気中にて熱アニール,またはKrFエキシマレーザ(248nm)でアニールすることにより,SrGa_2S_4:Euが部分的に形成され,その発光特性から電子線の侵入領域について評価を行なっている。レーザアニールにおいては,レーザの侵入深さも1つのパラメータとなるため,電子線の侵入深さの解析から,レーザアニールによる熱伝播の深さ方向の解析も行なった。熱伝導方程式を用いたシミュレーションを用いた解析の結果,試料表面におけるレーザ照射による温度上昇は600~1000Kとなり,膜厚方向では約200~300nmの表面近傍のみがSrGa_2S_4の結晶化温度に到達していることが明らかとなった。 侵入深さの定量化には,材料の基本的物性が必要となるが,SrGa_2S_4の物性についてはまだ明らかになっていない。そこで,紫外線励起による発光特性の依存性から,パラメータを調べた。青色〜紫外線の励起波長及び強度を変化させ,その発光スペクトルと強度及び吸収係数などから,SrGa_2S_4の基礎的物性について調べた。この結果を電子線励起における侵入深さにフィードバックさせることにより,より精密な評価を行うことができると考えられる。
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